2013/11/14

エレンタールについて

 経鼻胃管でエレンタールを流し込むようになって1週間。経鼻胃管の挿入や注入用バックのセッティングにも慣れてきた。経鼻胃管を入れたままでも結構眠れることもわかった。寝返りも苦にならない。もともとあまり深い眠りにならないタイプなので、夜間には何度か目覚めてしまうが。

 夜間にエレンタール3パックを規定通り900ccとして溶解している。これを時速120ccで注入している。気になるのはポンプのモーター音が少しうるさいことと、経鼻胃管とバックからのチューブの接続部が外れないかどうか心配なこと。ここが外れると布団がエレンタールびたしになって、きっと悲惨なことになる。

 自分は医療者なので、比較的抵抗が少なくこの栄養療法を受け入れられた方だと思う。それでも少なからず抵抗はあった。やはり夜の自由が奪われるし、開始前後でかなり手間がかかる。一般の患者さんであれば、もっともっと受け入れが悪いであろう事は容易に予想できる。欧米ではなかなか普及しない治療に違いない。

 これも一つの実験だ。エレンタールを溶かす水の量と注入速度。これを自分の睡眠時間に合わせていかにベストに持って行くか。あまり水分の量が多くなると途中でトイレに行きたくなってしまう。水分の量を減らしすぎると浸透圧が高くなって下痢になりそう。その加減は人によって様々なはず。とりあえず3パック750ccとして7.5時間の睡眠時間に合わせたい。


2013/11/13

経管栄養

 手術後2週間近く経過し、やっと創部の痛みも軽度になってきた。院内を歩き回ることもできるようになり、8階の病室まで階段を登ってくることもできるようになった。階段はさすがに息が切れる。体力の低下は明らかで、ちょっと情けなくなるくらいだ。

 昨日はジェイメディカルの方がレンタルのポンプを持って来てくれた。非常に丁寧にポンプの使い方を教えてくれた。いよいよ自宅での経管栄養が始まるのだ、という実感がわいてきた。経鼻から胃管を自分で挿入する手技や、独特のにおいがするエレンタールを毎晩注入するのは、自分でもかなり抵抗があった。

 もし自分がもっと若くて、家族がいなければ、経管栄養は拒否したかも知れないと思う。きっと日中に経口で飲むようにトライして、おそらくその味の悪さで挫折するのではないだろうか。今、私が経管栄養を導入するモチベーションは、仕事への復帰と家族への責任感だ。何としてでも仕事を続けたいし、家族を養わなければならない。そのためにはやるべきことはきちんと全てやろうと思う。

 でも経管栄養は思ったより簡単で、もう胃管の挿入も、機械のセットも慣れた。胃管を入れたまま寝られるかどうかが心配であったが、それ程の違和感もなく眠れている。セッティングと後片付けがちょいと面倒な程度だ。ただこれも若者では夜の自由が無くなるので辛いだろうなと思う。幸か不幸かもはや夜の自由もあまり必要で無くなった。ゆっくりと栄養を摂取することにしよう。


2013/11/11

日々回復

 お陰様で術後の経過は良好だ。日毎に創部の痛みも少なくなり、身体の動きが良くなってきている。エレンタールも夜間に経鼻で3パック、日中経口で1パックを摂取し、合計1200kcalを摂取している。不思議なことに、起床後に全く胃もたれしない。結構なカロリーを夜中に摂取しているのに。さすがエレンタール。消化を必要としないからだろう。

 本日の昼食から七部粥になった。徐々に固形の米食になってきた。低残渣・低脂肪食なので、おかずはこの程度が限界かもしれない。それでも絶食後の今では、十分に美味しい。ただ、3食完食しているので、エレンタールも入れるとカロリーオーバーになるのではないかと、少々不安だ。

 自宅から筋トレ用にゴム紐を持って来た。胸筋と背筋を鍛えてみよう。この動きなら腹部に圧がかからず、創部に響かない。早朝には院内の散歩も開始した。この体調なら外来くらいはこなせそうだ。やっと退院と、その後の生活が見えてきた。

 クローン病の診断がついたのが今年の6月だったから、約5か月経過したことになる。これまでの治療をまとめておく。初期治療としてステロイドを用いたが、寛解導入できず。絶食で寛解導入し、小腸の狭窄部を切除した。今後ヒュミラとエレンタールの2本柱で治療することになる。これでいつまで寛解が維持できるだろうか。現在の一番の不安は、今後仕事が通常通りにできるかどうかだ。


2013/11/08

回復

 術後8日目。文字通り日毎に回復してきている。創部の痛みも体調も。昨日までできなかったこと、寝返りや起き上がり、歩行などが、今日はできるようになってきている。こうなってくると「明日はどこまでできるようになるだろうか」と思えてくる。一歩離れてみれば人生のどん底に近いのだが(多分)、それでも小さな幸せを感じる毎日だ。

 今日はベッドの頭を起こさなくても起きられた。腹部の術後の痛みもかなり少なくなり、トイレまでの往復が簡単になった。一昨日まではそれこそ気合いを入れてトイレまで行っていたのに。昨日から三分がゆが開始となり、今日で点滴も終了した。最後の一本の点滴は感慨深いものがあった。夜間はエレンタール4パックを経鼻胃管で注入する予定。そのため日中は何の管も入っていない状態であった。本当に幸せな気分でシャワーを浴びることができた。

 午前中には栄養士さんから妻と一緒に栄養指導を受けた。かなり勉強されているようで、患者会での情報なども教えてもらった。私の職業柄のためかもしれないが、これまで食事についてこれほど詳細に教えてもらえていなかった。確かにほとんどが知っている知識ではあったが、それを家族と共に聞くということはまた違った意味があると思う。妻もしきりに「聞いて良かった」と言っていた。子供達とは別の食事を私のために作る必要があるのかと考えていたようだ。

 食事制限のある病気は本当に辛い。それは本人だけではなく、家族にも強く影響するからだ。食事は分化の大きな一面を担う。楽しい食事は人間関係の潤滑油であろうし、楽しい旅行は食事抜きには考えられない。今後、いろいろなものを犠牲にしなければならないのだろう。しかしクローン病という窓から、また違った面白い景色が見られるかも知れない。自分の置かれた環境でベストを尽くす。それが全て。


2013/11/07

絶食後の病院食

 今日の昼食からやっとご飯が開始になった。入院してからの1か月間の絶食は長かった。特に最初の1−2週間はどうにもならないほどの空腹感だった。この期間に御世話になったのは、沖縄黒飴とロッテグリーンガムの2強。混ぜ物の入った飴やキシリトール配合のガムは避けた。ちょび反則物として、黒角砂糖と森永ミルクキャラメル。途中に一度だけオニオンコンソメスープを飲んだが(かなり幸福感があったが)、下痢をしたので止めた。

 やっと食べた三分がゆの低残渣食。それでも御飯粒の美味しいこと。今までにも病院当直時に病院食を試食していたけど、美味しいかどうかなんて考えたことはなかった。美味しいものとして考える対象ではなかった。いや、美味しいよ病院食。この一食のカロリーは大したことはないだろうけど、これを点滴で補うのは大変だろうよ。そしてほうじ茶。これは絶食時に飲むものではなくて、食後に「ふうー」って言いながら飲むものだな。

 日中に飲み物も飲めるようになり、こうやって食事も開始になった。1週間もしないうちに常食(とはいえ低脂質・低残渣食)まで昇進するらしい。点滴が不要になるのも秒読みで、日中はかなり自由になる。エレンタールは今日から2パックとなり、夜間に経鼻で行うことになった。

 こうなると退院が見えてきた感じ。外は大雨で雷が鳴っているが、心は軽やか。にわかにコンピュータを立ち上げ、久しぶりにリアルな感覚を持って予定表やTo-Doリストを眺めてみる。退院後はいつから復職しようか。食事は何を食べてやろうか。エレンタールの量とスピードはどうしようか。やっとエンジンがかかってきた感じがする。


2013/11/06

術後6日目

10月31日に手術を受けた。硬膜外麻酔プラス全身麻酔。小腸(回腸)と回盲部を50cm程度切除した。小腸壁が穿孔して大網側に膿瘍を形成していた部位もわかったらしい。これで現在の所、狭窄部位はなくなったわけだ。手術は極めて順調に経過したようで、2時間ちょいで終了した。手術に関わって下さった人々に感謝。

術直後は硬膜外麻酔のためか、腹部の痛みはほとんど感じなかった。むしろ両下肢から腹部に強いしびれ感というか、感覚の低下があった。これは硬膜外麻酔のためだろう。硬膜外麻酔はゆっくりと自動で持続注入されるようになっており、薬剤の袋の量からすると術後3日間ほどは注入が可能なようだ。この硬膜外麻酔には本当に助けられたと思う。一番痛みが強い時期を少し緩和できるからだ。

手術翌日の午後には何とか廊下まで歩いて往復してみた。術後2日目にはトイレまで数回往復。3日目にはフォーレを抜去し、硬膜外麻酔も終了。動きとしては、腹筋を使う動作が辛い。例えばベッドから起き上がるような動作だ。歩いてしまえば、少しは歩ける。でも食堂の方まで行くと、腹部の中に痛みを感じる。

お陰様で日毎に着実に回復しているようだ。一日の中でも朝と夕とでは、動きが良くなっているのがわかる。昨日からエレンタールの経鼻注入が開始された。胃管はやはり鼻の奥に違和感をもたらすが、文句は言っていられない。とにかく栄養をつけて、早く退院することが目標だ。昨晩は点滴の入替のために留置針も抜去。鼻の管も無し。管が身体についていない久しぶりの夜となって、安眠できた。管がついていないということが、これほど大きな事なのか、と実感した。

2013/10/30

手術前日

 入院より絶食のまま4週間経過。いよいよ明日が手術。狭窄プラス穿孔した小腸の切除予定だ。悪くなった部分だから仕方ないのだけれど、自分の身体の一部が文字通り削がれていくようで切ない。全身麻酔下での手術は初めて受ける。同時に硬膜外麻酔も行うようだ。これも当然初めての経験だ。

 どの医師が麻酔をかけてくれるのか、だれが実際に手術をするのか、少々気になるところはある。それが正直な気持ちだ。だが自分も患者さんや先輩に教えてもらってここまでやってきた身の上であるし、好き嫌いは言っていられない。もちろん手術だってそうだ。担当医は最終的な責任者であって、ところどころ、あるいはほとんどが若手医師が手術する可能性もあるだろう。それも結構。お役に立てれば幸いだ。

 だがこの気持ちは医療者だからかもしれない。患者さんからみれば、いつでも最高の治療を受けたいという気持ちがあるのは間違いない。しかし現実的にそれはなかなか難しい。でも医療者には最高の治療を行う心意気が要求されると思う。これも言葉で書くほど簡単ではない。最高とは何か。誰にとって何が最高か。それは万人共通ではないはず。

 医療というのは当然人間が対象であり、純粋な科学とは異なる。常に最高の医療を提供する、少なくともその心意気を維持することは医療者の義務だろう。一方で患者さんも協力しなければならない部分もある。その中で様々なドラマが生み出されていくのが医療だと思う。患者として手術の準備は整った。後は淡々と手術を待つのみ。